Crazy for you



 同じ男に組み敷かれるなんて、屈辱以外の何物でもないと思っていたのに。
 見上げた俺を見つめる、熱い眼差しだとか。
 耳元で囁かれる低音が、体を火照らせていく。

「景吾が、悪いんやで?」
「アーン?」

 人のこと押し倒しといて、何を言いやがる。
 軽く睨めば、荒々しく唇を奪われた。

「景吾の所為や…今までフツーやったのに、まさか男…いや、男がえぇんとちゃう。お前が、景吾だからえぇんや」

 射るような強い眼差しに、胸がやかれる。
 早鐘のような胸の鼓動が、煩く耳奥に響く。

 耐えきれなくて目を伏せれば、抱き締められ、直接言葉を耳に吹き込まれた。

「お前が俺の全てを狂わせたんや…もう、景吾以外愛せへん」
「っ…」

 お互いの腕に、無意識に入っていた力を抜き、見つめ合うと、無言のままに互いの服を脱がせていく。
 まるで一分一秒でも早く、相手の温もりに触れるかのように。

「んっ、はぁ…忍足」
「違うやろ?こんな時くらい、ちゃんと、呼んでや」
「…侑士」

 少し冷たい手が体を這う。
 反対に熱い唇が、手の後を辿っていく。

「はっ…ン」

 痛いくらいに起ち上がる胸の頂きを甘噛みされ、ゆるく反応し始めた自身をやんわりと梳かれ、声が鼻に抜ける。
 正直これだけで反応する体も、女みたいな嬌声も、自分では気持ち悪いとしか思えない。
 だから声を噛み殺しているってのに、

「くぁっ、んっ!」

 わざと声を出させようと、刺激を強めてくる。

「なぁ、我慢せんと声出しぃや。景吾の甘い声が聞きたいねん」
「だっ、れがっ…ンンッ」
「ほな、無理にでも出してもらおか」
「なに…ンアァッ!」

 冷たいものが後孔に触れたと思った次の瞬間貫かれる。
 驚いて締め付ければ、ナカにあるのが指だとわかった。

「流石ローション。簡単に入ったな…ほな、始めよか」
「ヒッ…あ、あ、あぅっ…はぁっ」

 ぬめる指でごりごりと前立腺を押され、張り詰めた自身を口に含まれ、今にも弾けてしまいそうになるを、シーツを握り締め必死に耐える。
 声なんて抑えられる程の余裕は残されていなかった。

「んっ…その顔、えぇな。最高にそそられる」
「そっ…かよ!ぅあっ」

 粘着質な水音と自分の甘ったるい声に頭がおかしくなりそうだ。
 それを、忍…いや、侑士はそれが良いという。

「感じとる証拠やろ?嬉しいやん。それに…めっちゃ可愛ぇ」
「っ、ふざける…あぁっ、ん、あっ…あ?」

 ぐちゅぐちゅとナカを犯され、袋をキツく吸われ、もう限界だと感じた瞬間、指を引き抜かれた。

「そない不満そうな顔せんでも、今もっとえぇモン挿れたるよ」
「んくっ、あうぅっ!」

 挿入の刺激に危うく達しそうだった自身の根元を慌てて握り耐える。

「なんや、イッても構わんのに」
「…っしょ、に、イきた、あ、まっ、ひあぁ!」
「そ…んな、可愛ぇことっ、言うた自分が、悪いんやっ!」

 急にガツガツて奥を激しく突かれてはたまらない。

「だっ…めだ、もっ…イッ、イクッ!」
「俺も、や…くっ!」
「ん、あ、あーっ…っあ…」

 手を離すと同時に吹き出した自分の欲と、体の奥で感じた熱。
 まだ僅かに震える俺の身体から退くと、疲労感に身を任せ、そのままどさりと俺の横に倒れこんだ侑士。
 ある程度お互いの呼吸も整った頃、隣から腕がのびてきて引き寄せられた。

「…何だ?」
「や、幸せなやーと」
「ヤれて?」
「ちゃうわ!」

 抱き寄せる腕に力が入り、抱き締められた。

「大事な子の特別になれたことが、こうして触れ合えることが、まぁ…上げたらキリ無いんやけど、色々と?」
「…フン」

 そんなのは…
 お前だけが思っていることじゃない。
 口には出さす、目の前にある唇に噛み付くようにキスをした。
 驚いたように見開かれた目が、優しく俺を見るのは、きっと重ねた唇から、絡む舌から、同じ気持ちでいることを解ったからだろう。

 狂わされたのは、お前か俺か…?



終わり


 気付けば、10年近く同人やってて、初の忍跡エロ!
 マガ読者様からのリクですが、リクでも来なきゃ書かなかったかも;
 感謝感謝。
2011.4.13

モドル