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Happy Birthday*

 先日購入したジャケットのポケットに忍ばせたアイテムを落とさないか心配しつつも、俺は全速力で走っていた。
 本当は薔薇の花束を持って、今から30分前には待ち合わせ場所にいる筈だったんだ。
 キザかもしれないけれど、特にそういうイベント毎に関しては完璧且つロマンチックに過ごしたかった。
 それが、まさかの遅刻とは。
 言い訳の台詞よりも先に、とにかく早く向かわなくてはいけない。
 せっかくセットした髪も随分と崩れ、格好悪いったらない。


 今日が日曜日という事を忘れていた。
 電車は休日のダイヤ、家族連れやカップルでいつもより混んでいる車内。
 駅前も人ゴミでしかも何か祭りがあるみたいで交通規制。
 ちゃんと把握しておくべきだった。
 あーっ、もうそんな事どうでもいいから、もっと速く走れ、俺!


「待たせてっ、ごめんっ…!」


 待ち合わせ場所に着いたのは約束の時間から15分過ぎ。
 女の子を待たせるなんてありえないけれど、これは紛れもない事実だから平謝りするしかなくて。
 彼女、虎葉は俺の姿を見るなりホッとした笑みを浮かべ、たった15分だからとあっさり許してくれる。
 それでも、今日は大事な日であって。
 本人は大して気にしていないようだが、俺にとって今日という日は大事な大事な日で。


「誕生日、おめでとう!」


 本当は30分前に、薔薇の花束を手にここでスタンバイしている筈だった。
 髪もやり過ぎない程度にセットして、新しいジャケットを羽織って。
 虎葉を待っている間、知らない女の子に声を掛けられたとしても笑顔でスルー。
 待ち合わせ場所にやって来た虎葉の手をすかさずとり、爽やかに花束を差し出す。
 二コリと微笑んで、お祝いの言葉をいう筈だった、予定だった、頭の中でシュミレーションも行った。


 現実は15分以上待たせた挙句、髪も服も息も乱れ、花束?
 そんなの買う時間なかった。
 買えたとしても、きっと今頃風の抵抗に勝てずにぐしゃぐしゃになっていただろう。


 だから、これだけは、どうしても。


 虎葉の体を包み込んで、俺でいっぱいにさせて、おめでとうを言って。
 ジャケットのポケットに手を伸ばす。
 この日の為に選んだ指輪。
 絶対似合うと思って買っておいた、ピンキーリング。


「俺のもの、って印、つけたかったんだ」


 驚いてる?
 それとも呆れてる?
 ごめんね、折角の誕生日なのに慌ただしくて。
 それでも、この指輪をはめている虎葉を早く見たくて。


「誕生日、おめでとう。これからも俺の彼女として、幸せでいて下さい」


 いずれ薬指の指輪をプレゼントするから。
 それまでもう少し、なかなか完璧にこなせない俺をよろしくね?



千石 清純




お誕生日おめでとう~!
というわけで、約束の千石です。
いつもはヒロインの台詞も書くんだけど、今回は虎凰のためだけに書いたので入れませんでした。
最後の方駆け足になっちゃったけど、久々に書いた千石です、よかったら貰って下さいな^^
2012.7.1  早瀬桐

大分遅くなちゃったけど、マガ発行者友達の桐からの頂き物。
私がキヨ好き~vって騒いでたら、普段書かないキャラなのに書いてくれました!
ありがと~う!
またよろしく☆
2013.4.14


モドル