雪
「あ!ねぇ宍戸さん、外!外見て下さい!」
今年最後の部活も終わり、帰ろうと制服に着替えるレギュラー陣。
一足先に着替えた鳳は宍戸を呼んだのだが、振り返ったのは宍戸だけではない。
「どないしたん鳳?」
「なんだよ…って、雪じゃん?!おい!ジロー起きろ!雪降ってるよ!」
「んぁ…?なぁーに岳人?雪?って…うわ?!マジマジ?スッゲー!外行こーぜ、外!」
起き抜けにハシャグ芥川と向日はそのまま外へ飛び出して行った。
「あ〜、行ってもた。この寒いにお子様は元気やなぁ」
コートへと向う二人の背を見送り、忍足が呟くと、
「雪なんて何が嬉しいんだ?これで暫らくコートはグチャグチャ。部活どーすんだよ」
「まぁ、そう言いなや跡部。雪もなかなかえぇもんやで?」
「どこが?寒いし、濡れるし、ろくなモンじゃねー」
「でも、綺麗ですよねぇ…」
宍戸を呼んだきり、静か(?)に外を見ていた鳳が、ぽつりと呟く。
「何だ、長太郎も好きなのか、雪?」
「はいっ!見てると綺麗だし、それになぜか気持ちがハシャグんですよ!まだ俺もコドモってことすかね?ね、宍戸さん、俺達も外行きましょうよ!」
「え?っおい、ちょ…」
そう言うなり、宍戸とコートを掴むと外へ出て行く。
「なんやあのキラキラした目ぇ。静かやと思っとったら、鳳は見惚れとったんか」
「どうも、そうらしいな。っつーか、鳳の場合、子供っつーより…」
「犬だからだろ(やろ)」
重なる声に、どちらともなく笑いだす。
雪も降りだす程寒い日なのに、なぜか二人は寒くなかった。
〜OUT SIDE〜
コートに足跡を付けて回る向日と芥川を遠目に見ながら宍戸は鳳に声を掛ける。
「なぁ長太郎、もう戻らねぇか?さっきからずっと空見上げたまんまつっ立ってて寒くねーのかお前?」
そうなのだ。
先程から鳳は宍戸を連れて外へ出たきり、ずっと空を見上げたまま動かない。
「えー、もうちょっと居ましょうよ」
「そう言っても、いくらコート着てたって寒いんだよ!雪見てるだけなら部屋の中からでいいじゃねーか。戻ろうぜ?」
確かに宍戸も雪は綺麗だと思う。
が、寒い中何十分も、しかも“外で”見るものではないとも思う。
なのに、
「あ、寒いからっすか?なら宍戸さん、こっち来てください」
宍戸が鳳のもとへ行くと、
―フワッ―
鳳は自分のコートを広げたかと思うと、宍戸を抱き寄せ、コートの中に閉じ込める。
「これなら寒くないでしょ?」
「バッ、やめろアホ!恥ずかしいことすんじゃねーよ!クソッ、激ダサι」
何を言ってもきかない鳳はまた空を見上げる。
「ねぇ、宍戸さん、もう少しだけこのまま。大好きな人と好きなものの中にいる幸せをもう少しだけ。大丈夫ですよ。冷えた体は、後で俺が暖めてあげますからvV」
「ねぇ岳人〜、なんかあの二人の周辺だけ、雪があんま積もってなくない?」
「そりゃ、あんだけのバカップルだぜ?雪も溶けるって(笑)」
「あ〜、確かに。まいっか。ほっといて続き!俺の雪ダルマ、大きさなら絶対負けないC〜」
「俺だって負けるか!」
雪の降る日、思い思いに過ごす時。
いつもより少しだけ弾む心。
雪の日。
幸の日。
終わり
暮れの初雪を見て、3時間で書き上げたもの。
私にしては驚異のスピード(笑)
氷帝っ子達の賑やかで楽しい話が書きたかっただけだったりもしますが。
モドル