今日はなんの日
いつもより少し早く目が覚めた。
今日は、俺の誕生日。
でも、多分、大体の人はバレンタインっていうことの方が大きくて忘れてる。
あの人は、宍戸さんは覚えててくれてるのかな…
いつもの様に宍戸さんと学校へ行く途中、訊かなきゃよかった…
「今日、何の日か知ってます?」
「はぁ?バカにしてんのかオマエ?バレンタインだろ」
なんて答えられたもんだから。
「あぁ、そおっスね」
「また今年も跡部なんかは山ほど貰うんじゃねーか?」
その後の会話なんて、自分が何を言ったかさえ覚えてない。
勿論朝練もぼろぼろで、宍戸さんと部長の二人に
「ヤル気あるのか!?」
って怒られた。
だって、ショックなんですよ?
他の誰が覚えていなくても、あなたにだけは、
「おめでとう」
って言って欲しかった。
それだけでよかったんです。
でも、覚えてないなら仕方ない…
のかなぁ。
「今日、俺誕生日なんです」
なんて、プレゼントの催促みたいで言えないし。
まぁ、宍戸さんが今日はバレンタインてこと覚えてるなら、帰りにチョコでもねだってみよう。
それくらい、いいよね?
そんなことを考えながら、部活へ向かった。
気持を切り替えた(要は諦めただけだが)午後の部活は、怒られない程度、マシに行えた。
部活も終り帰り際、言ってみようと口を開きかけた時
「なぁ、これからオマエの家寄っていいか?」
なんて聞くから、ほぼ反射的に
「はい!」
って答えていた。
家に着き、とりあえず宍戸さんと自室に向かう。
「どうぞ」
ドアを開け、部屋に入り、
「荷物、適当に置いてください」
そう言いながら、閉めようとドアを押すと、パタンという閉まる音と共に、体に軽い衝撃。
後ろから宍戸さんに抱きつかれていた。
「!?し、宍戸さん?急にどうし」
「誕生日、おめでとう」
「え…お、ぼえてたん、ですか…?」
「バーカ、忘れるわけねーだろ!恋人の誕生日なんて」
「…」
「黙ってンなよ!恥ずかしーだろ!…長太郎?」
黙ってしまった俺を不審に思い宍戸さんは正面にまわって、俯いていた俺の顔を覗き込む。
「な、何泣いてんだよ?!俺なんか悪いこと言ったか?」
「…違うんです、なんか、すごく嬉しくて」
朝、宍戸さんに訊いたとき、やっぱり覚えてないなって、悲しかった分だけ、嬉しさが増えて。
俺の考えている事がわかったのか、宍戸さんは、
「朝は…悪かったな。オマエのこと驚かせたくてさ。でも、さすがにこんな落ち込むとは思わなかったんだ…ゴメンな」
「謝らないで宍戸さん。ホントに、なんて言ったらいいかわからないけど、ただ、凄く嬉しくて。ありがとう」
そう言って、今度は俺が宍戸さんを抱き締める。
珍しく俺の腕の中で大人しい宍戸さんと目を合わせると、
「今日は…特別だからな」
ボソリと彼が呟いた次の瞬間。
…夢、じゃないよな?
だって、宍戸さんからキスしてくれるなんて!
離れていく唇に、名残惜しさと、現実みを感じたけれど、次にその唇に紡がれた言葉に、全ては喜びへ。
『HAPPY BIRTHDAY アイシテル。』
fin
これはチョタのBD記念小説だったかな。
イベントと被っちゃうと、忘れられたり纏められたりしがちだけど、
誕生日っていうその人だけが特別な意味をもつイべントの法を大事にしたかったので。
モドル