Together



 明後日はもう忍足の誕生日という今日、珍しく跡部は困っていた。

(あー、ったく、どうすっかなー、プレゼント)

 そう、プレゼントをまだ買っていない、いや、決めてもいないのだ。
 なぜなら、


(アイツ、服でもなんでも、一応見るが、そこまで欲しがってるモンなんか見たことねーしなぁ)

 そんなことを考えているうちに時間は過ぎ、とうとう明後日になってしまったわけだ。
 だが、このままでは、本当に何も用意しないまま明後日になってしまう。

 そこで、仕方なく跡部は、

「チッ、仕方ねぇ、直に訊くか」

 その日の帰り、日が短くなって、暗くなった道を歩きながら、

「忍足、BIRTHDAY PLESENT何が欲しい?」
「は? なんや?また、えらい唐突やな」
「いいから、早く答えろよ。何でも良いんだぜ?俺様に買えない物なんてねーんだからよ?」
「うーん、そやなぁ…“時間”かな」
「“時間”?」
「そや。景吾と一緒に居る“時間”や。景ちゃん、普段、忙しいやん?休日かて、あんまり会われへんし。せやから、な?誕生日くらいそばに居って?」
「あぁ


 辺りが暗くてよかったと、跡部は思う。
 きっと今、自分の顔はさぞ赤いことだろう。

 翌日、都合の良いことに金曜日。
 部活終了後の部室で忍足が着替えていると、先に着替え終った跡部が、ケータイで誰かと話しているようだった。

「あぁ…じゃあ」

(誰やろ?)


 忍足がそう思っていると、

「おら、忍足!早く着替えろよ!あんま、おせーと置いてくぞ!」

 いつの間にか電話が終っていた跡部に急かされ、着替えて部室を後にした…
 のだが、

「なぁ、景吾、何処行くん??」

 跡部は正門と反対方向に歩いていく。

「来りゃわかる」


 不思議に思いつつも、黙って跡部についてく。
 そして、裏門へ着くと、突然、拉致られ…
 いやいや、迎えに来たらしい跡部の家の車にのせられた。

 どうやらさっきの電話はこの為だったようだ。

「な、なんや?!何処行くん?!今日明日と家で過ごすんやないの??」
「バーカ、それじゃいつもと変わんねーだろ。わざわざお前のためにホテルとってやったんだよ」

 照れながらも、気の所為かいつもより優しい跡部の言葉に忍足は微笑を零した。


「な、なんだよ。笑ってんじゃねーよ、気色ワリィ!」
「ん?景ちゃんは優しいなぁー、思て」

 なんだ、急に、と跡部が思っていると、

「着きました」

 と運転手が告げた。

 普通なら、中学生二人なんて、泊まれるはずもないのだが、そこは跡部様。
 制服にも関わらず、何の問題も無く、フロントでチェクインを済ませ、部屋へ向かう。
 着いた高層階の部屋はとても大きなガラス窓で暗い部屋から綺麗な街の灯を見下ろした。

「綺麗やなぁ」
「だろ?気に入ったか?」
「あぁ、でも、やっぱこっちのがえぇわ」


 言うが早いか忍足は跡部を口付けながらベッドに組敷く。
 クチュ、と時折響く水音。
 長い長いキス。
 唇を離した頃にはもう、跡部の息は上がり、瞳は濡れていた。

「綺麗やなぁ、景吾は。誰よりも。何よりも。愛してる、景吾。なぁ、えぇか…このまま?」
「…侑士」

 二人は求め合うままに体を重ねる。
 窓からの灯に照らされながら。
 やがて、日付も変わる頃、キレイな発音で聞こえた


HAPPY BIRTHDAY



end








 
お金で買えないものがあるんだよ…?
 というベタなネタを書いてみたかったんです;






モドル