』と言う名の暗い



         あなたを守りたい。

       大切にしたい。

        ずっと笑って、俺の名を呼んでくれたら、それだけで。




 そう思うのは俺の本心。
 でも、

 

         あなたを泣かせたい。

       汚したい。

        傷つけて、壊してしまいたい。




 そう思うのも俺の本心で。

 叶う筈も無い恋だと思っていたから、実っただけで嬉しくて、満足だったはずなのに…

 いつからか、もしかしたら最初から在ったかもしれない暗いヨクボウ。


          あなたを閉じ込め、鍵をかけて。

        誰にも見せないように。

         俺以外の誰かを、その瞳に映さないように。



 強すぎるこの想い。
 ぶつければ、あなたはきっと、本当に壊れてしまうから。
 一瞬の悦びで、永遠にあなたを失う。

 だから俺は…


「どうした、長太郎?さっきからぼーっとして」

 急に掛けられた声にハッとする。
 俺を心配してくれる声。

「なんでもないです、ちょっと考え事してて」
「そっか?ならいんだけどよ。悩みあんなら俺には言えよ?」

 嬉しいけど、無理ですよ。
 言えるわけないんです、こんな醜い想い。

「はい、ありがとうございます」
「オウ

 あなたに見せることは出来ない、消えることはないだろうこの想い。
 少し、心は重くて痛いけど。
 あなたを失うぐらいなら、この痛みに耐え続ける方がずっといい。

 だから、抱えて、隠してみせる。


        大丈夫、決して見せはしないから。


end








 相反する二つの想い。
 でも、それはどちらも自分の本心。
 人間は矛盾の多い生き物だよねって話。





モドル